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最強彼女
◎アイナナ二次創作です。今回は大和さん×紡ちゃん。
 大和さんの飄々としたところがたまらんです。飄々としてるのに紡ちゃんがいつも彼の
 熱血スイッチを押してくれるような感じがたまりません。美味しすぎます(え!?)
 この時間軸は大和さん→紡ちゃんな感じで。

 大和さんカード等全部そろえてないので事務所配置などに矛盾や間違いがあったらすみません!◎

『ネメシス』の視聴率は俺の予想を大きく上回って、かなりの高視聴率だと社長と紡から教えてもらった。似た者親子というか、自分のことのように俺の役者としての一面がレベルアップしていくことを喜んでくれた。俺としては古巣に戻るわけで、まあいろいろと喉に小骨が突き刺さって取れないみたいな感覚がずっと残ってるわけなんだが――まあいいか、と思わせてくれるのがこの二人の実はすごいところなんじゃなかろうかと思ってしまう。……とにかく前向きで、芯が強いよな。お兄さん、見てるだけで照れちゃいますよ。

 たぶん、この『ネメシス』をきっかけにして、俺の個人的な状況も変わっていくきっかけになっていくんだろう。この間同じ歌番組で一緒になった千が、わざわざ裏で俺が一人になるのを狙って接触してきたときのあの笑顔を見ると何とも言えない気持ちになる。まだその片鱗は見えてきてないが。

 俺は小さくため息を吐いて、玄関口でスニーカーに足を突っ込む。ちょうど食堂に行くつもりだったのか、環が部屋から出てきて俺を見た。

「ヤマさん、どっか出掛けんの?」

 深夜十時。まあ今のご時世、二十二時くらいだったら深夜ってほどでもないけどな。まあ出掛けるには遅いことに間違いはない。うむ。

 俺は笑って答える。

「大人のたしなみを補充しにコンビニへな。お子さまはもう寝なさいよ。明日は早いだろ」

 一応メンバーのスケジュールってのは把握してあります。最近はソウとも大きな問題を起こさなくなったけど、まあ気を付けておいて無駄ってことはないわけだし。ああお兄さん、最近マネージャーの影響受けまくりですねー。

 環は俺の言葉に少しだけむっとした顔になる。すぐに感情が顔に出るところが環のいいところだよなー。俺にはもう無理だわ。

「お子さま、違う」

「ああ、悪い。言い方が間違ったな。寝てるときにちゃんと寝ておかないと、仕事に影響が出るでしょ」

 一応俺のことを年長者として敬ってくれているのか、環は今度は素直に頷く。

「わかった」

「いい子。んじゃ、王様プリンは無理だけどプッチンプリンあたりを買っといてやるわー。明日の朝、冷蔵庫見とけー」

「……ヤマさん、好き!」

 はいはい、プッチンプリン程度でお前を釣れるんだったら安いもんですよ。俺は片手をひらひらと振って、寮を出てコンビニに向かった。

 小鳥遊事務所と俺たちが今世話になってる寮は歩いて行ける距離で、その先に最寄りのコンビニがある。特に何があるわけでもなかったが、何となく事務所の方を通っていくのはもう癖になっているんだろうな。ほら、刷り込み的な。雛鳥が親鳥について行くみたいな。

 ……違うか。事務所には、あいつがいるからか。

 さすがにこの時間は自宅に帰っているはずだ。けど、紡は俺たちに同行していないときはたいてい事務所に詰めていて、俺たちIDOLiSH7のためにもっと良い方法はないかと模索している。すごいよな、と純粋に尊敬する。あのエネルギーは俺たちがIDOLiSH7
にかける情熱を軽く上回ってる。

 けどあいつにとって俺たち七人は平等だ。俺たちの誰一人が欠けてもIDOLiSH7にはならない。他の誰かが加わっても、IDOLiSH7にはならない。それを誰よりもよくわかっているから、紡にとって俺たちは全員、『平等』だ。

 じり……っ、と胸奥に灼けるような想いを感じて、俺は立ち止まって息を吐く。いやいや、熱血は俺のガラじゃないでしょ。やばいやばい。紡が関わるとどうにも調子が狂……あれ?

 俺はたまたま見上げた事務所の窓の一つから、灯りが漏れているのを確認して驚く。残業してるヤツがいるな。万理さんか社長……か? まさか、紡……じゃ、ないよな?

 嫌な予感っていうのはなぜか俺の場合、よく当たる。俺は念のためと自分に言い聞かせながら事務所の中に入った。

 弱小事務所のおかげか、俺たちは一応ここのカードキーを持ってる。俺は財布の中からそれを取り出して、足音を潜めて入っていった。変に物音立てて泥棒扱いされたらこれまた面倒だからさ。

 二階の打ち合わせ用兼会議室から、灯りは漏れている。扉は閉まっているが、物音がしない。……電気の消し忘れ、とかいうオチか……?

 念のため、泥棒とか変質者とかいう可能性を頭の端に入れながら、俺はそっと扉を押し開く。

「……」

 室内の様子を見て、俺は思わずその場にしゃがみ込みそうになってしまった。……おーい、マネージャー……今何時だと思ってんですかね?

 会議室のテーブルの一角を陣取って、紡が座っている。扉には背を向けていて、ノートパソコンに画像を流していてイヤホン装備、となりゃ、まあ足音潜めてる俺に気づけないのは当たり前だな。

 しかし今何時だと思ってるんですかね、このお嬢さんは。いくら社会人だと言っても、お前さん、まだまだ十八歳よ? 自宅が近いからって無防備すぎやしませんかね。あんた、自分がどれだけいい女なのかってことわかってなさすぎじゃありませんかね。……ああ、何だろうな。無性に腹立ってきた。

 俺はさらに足音と気配を殺して、紡の背後に歩み寄る。相変わらず映像からは目を放していないため、俺にはまったく気づいていない。紡が真剣に見ているのは、俺たちのこれまでのステージ映像だった。

 ノートパソコンのキーボードの上にはノートが広げられていて、シャーペンで何か書きつけている。肩口からそっと覗き込むと、それはステージ演出のメモ書きだった。それで俺は合点がいく。

 ああ、なるほど。今度の新曲の配信に合わせて、ミニステージやるんだったな。俺たちのステージ演出は紡がメインでやってくれてるから、それか。

 けど、まだ時間はあるだろ。セトリは決まってるし、まだ一か月はあるわけだし。……頑張り屋さんだねぇ、この子は。

 残業する必要は今のところはないわけならば、ここを見過ごすのはお兄さん的にNGってことで。

 俺は紡の右耳に向かって顔を近づける。

「お、じょ、う、さん」

 言ってからふうっと息を吹きかけた途端、紡がビクウッ!! と飛び上がらんばかりに身体を跳ねさせた。あ、これはまずい。悲鳴上げられそう。

 俺は咄嗟に紡に両腕を伸ばし、片手で口を押え、片腕で華奢な身体を抱きしめた。柔らかくてふんわりとした感触は一瞬理性が飛んでしまいそうな感触だ。……ま、それを耐えるのが大人ってもんです。

「ふぐ……ふぐぐっ!?」

 動く唇の柔らかさが掌に触れて、これまた何とも言えない気持ちよさだ。俺は後ろから顔を覗き込み、笑った。

「はい、大和さんですよ、マネージャー。ちょっと驚かせようとしただけなんだけどさ。悲鳴上げられて通報でもされるとまずいから」

 俺の顔を認めると、紡はひどく安心したように大きく息を吐いて、全身の力を抜く。俺がそっと離すと、紡は片手で胸を押さえた。

「お、驚きました……」

「ごめんな。けど、もうちょい警戒しような、マネージャ。若い娘さんがこんな時間まで一人で残業ってのは、こういう可能性もあるってことでしょ」

「す、すみません……ご心配、ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」

 ……だからその自信はどこからくるわけ? あんたが男に襲われない保証はないでしょ。そこから俺はあんたに教えなくちゃいけないわけですか。ああ、そうですか。押し倒してやればわかるんですかね。

 いらっ、とした気持ちは笑顔の奥に綺麗に隠して、俺は紡の隣でマウスポインタを動かす。腕が触れ合いそうなほどの近さになって、紡が照れくさそうに身を強張らせたのがわかる。お、一応は男として意識してくれてるんですかね?

 ……意識、してくれてるんだ。

「これ、次の新曲用のミニステージ用の演出だろ」

 ポインタを動かして、ノートパソコンの終了させる。

「あ、はいそうです。どんな演出をしたらファンの皆様に喜んでもらえるかなって考えたら止まらなくなっちゃって……って、大和さん!? どうしてシャットダウンしてるんですか!? 私、まだ仕事中で……」

「はい、終了―」

 俺の声と同時に、ディスプレイが真っ暗になる。紡があわあわしながら再び電源ボタンを押そうとしたので、俺はその手を掴んで止めた。

「今日はもうこの辺にしておいた方がいいぜ。今からそんなに気張ってたんじゃ、変な時にぶっ倒れちまうぞ」

「だ、大丈夫ですよ。私、結構身体は丈夫なんです!」

「俺よりは弱いだろ」

 掴んだ手に少し力を込めて、俺は言う。低くなった声に何か感じ取ったのか、紡の身体が強張った。

 弱いだろ、マネージャー。俺がこうして掴んだ手を、振りほどくこともできないんだからさ。

 俺は伏し目がちにしながら、無意識のうちに掴んだ手を動かして指を絡めるように握っている。当然のことながら、俺とは違う華奢で小さな手だ。この手が、IDOLiSH7をさらに高見に連れて行こうとしている。

 俺たちを。……俺を。

「……大和、さん……?」

 俺の仕草にどう反応すればいいのか戸惑ったように紡が呼びかけてくる。俺は眼鏡の奥の目をふ……っと笑みのかたちにして、その手を放した。

「送ってく」

「……だ、大丈夫、です。アイドルの大和さんにそんなことをしていただくわけには……」

「アイドルの大和さんじゃなくて、あんたの仕事仲間の年上の男の大和さんとして見過ごせないわけ」

 紡の瞳が軽く見開かれ、頬が少し赤くなる。可愛いなぁとか思ったけど、とりあえず口にはしないでおく。そういうキャラじゃないでしょ、俺は。リクとかナギとかじゃあるまいし。

 IDOLiSH7の仲間たちがいるときは軽くさらりと言えるけど――二人きりのときは少し身構える。一応俺にも線引きっていうのはあるわけよ。

 その線引きを崩すには、まだ足りないものがあるから。

「じゃ、じゃあ……よろしくお願いします」

 紡は律儀に頭を下げながら言ってきた。ほら、まだ足りないわけだろ。こんな対応されちゃうわけだからさ。

 俺は眼鏡を押し上げる仕草で表情を隠しながら笑った。間違いなく『いつも通りの俺』として笑えている確信がある。



 翌日、俺は環にたたき起こされた。いや、俺の仕事の時間にはまだ数時間くらい余裕があるんだけどと言い返そうとしたら、環がものすごい形相で俺を睨みつけながら叫んだ。

「ヤマさん! プリン、ない!!」

 ……ああ、悪い、忘れてた。紡を送ったあと、ビールを買うのもやめてそのまま寮に帰ってきたんだった。

 環の怒りを宥め、何とか仕事に連れて行こうとする壮五の様子を見ると、悪いことをしたなぁってしみじみ思ってしまう。すまん、ソウ。お兄さん、ちょっとヘマしたわ。

「悪い、タマ。あとでプッチンプリンじゃなくて王様プリン買ってやるから。ごめんな」

「……絶対だかんな!!」

「環くん! ほら、もう出ないと!! 大和さん、行ってきます!!」

 壮五が環のフードを引っ張りながら連れ出していく。俺はそれをベッドの中で見送った後、大きくため息を吐いた。

 ああ困るわほんと。紡が関わると、とたんにいろいろと調子が狂う。最強だわ、うちのマネージャー。


HP初出//2016.08.21

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